「立命館映像展(2017年度 立命館大学映像学部卒業制作/大学院映像研究科修士制作合同展示・上映会)」の告知映像を監督しました。
本作品は【T・ジョイ京都(京都駅南 イオンモールKYOTO Sakura 館5F)】にて、会期前から数週間、映画上映前に放映されました。
はじめに
本作品は、約40名のスタッフの力を合わせて作り上げた「一発撮り」の映像作品です。当時から「あまり珍しくはないけれどめんどくさくて大変だからやりたがらない撮影技法」であった「一発撮り」を、映像学部卒展の顔となる告知映像で、実写映像監督経験の少なかった私がやってやりました。
制作期間は2017.12-2018.2初週あたり、撮影までは1ヶ月と少しくらい、急ピッチの中で行われた制作現場の裏側を、そういえば語る場所が今までなかったため、ここに記したいと思います。

本作品は、当時(2018年まで)の私の集大成だと言えるほど、いろんな学びを詰め込んだ作品です。この作品を通して、私の作家としての基礎基盤のようなものをお伝えできるかと存じます。
意図と挑戦
「映像学部の卒業制作展を告知する映像」って、学部の成績優秀者などが監督に任命されそうなほど責任の重い映像だなあと、当時の私は、立候補しておきながらそう考えておりました。

映像学部で養われる映像分野は、大きく分けて「映画」「ゲーム」「インタラクティブアート」「CG」の4つあります。それぞれが独立したり、交差したり、派生したり、研究の対象になったりと、幅広く学びの場は用意されておりますが、もとをたどればこの4分野に行き着きます。
過去に制作された立命館映像展のCMなどを見ると、ほとんどが “かっこいいプロモーションムービー" で、「映画」分野に明るい学生が制作したことが丸わかりな作品となっておりました。
もちろんそれも素晴らしい、技術や精巧さなど、映像学部の看板にふさわしいほどのクオリティに仕上がっていてため息がでます。
しかし、「映画」分野を除くほか3分野にはあまりフィーチャーされず、何も知らぬ人がその “かっこいいプロモーションムービー" を見たら「映画とか作る学部なのかな?」と誤解を抱いてしまいかねません。実際に学部内で最も力の入っている分野(というか興味を持つ学生が多かったり、学びやすかったりする分野)として「映画」系はわりかし人気が高く、「映画」庭の学生がその視点から立命館映像展を表現することは自然な流れでもありました。誰も声を上げない程度には。

そこからの脱却をはかりたい。それが本企画の根幹であり、解決したい課題でした。

それぞれが独立した分野でありながら、時には干渉し合う分野であることを示すため、一本の道筋を渡り歩く、その流れの構成を試みました。


作品の意図は、
「あらゆる分野を複合した、ニュートラルな『立命館映像展』告知映像」
加えて、私の当時の気分や好みから挑戦してみたかった狙いは、
「制作に対する熱量をそのまま描き出した、『学生』の見える作品」
結果がどうであれ、関わるメンバーみんなに目指して欲しい目標は、
「作っていることそれ自体が楽しい、『初心をたどる』制作現場」

この3点を軸に据え、企画を展開していきました。
「あらゆる分野を複合した、ニュートラルな『立命館映像展』告知映像」
「分野を横断する」という議題とは、入学当初に団体を立ち上げてまでして向き合ってきたこともあり、そこで得た学びが至る所で応用できました。
「音楽でも詩でも絵であろうとも、映像であるなしに関わらず、垣根を超えた創作物発表の場を確保したい」と願い立ち上げた団体での学びが、「ひとつの映像で他分野を複合させる」という課題を解決させる武器になっていたことは、個人的にエモーショナルな展開でした。
本作においても、映像分野のほかに「衣装デザイン/服飾」「音楽」など、映像以外の表現で活動する学生にも協力していただきました。画面の隅などで「造形美術」が得意な学生の作品が画面に見切れていたりもします。
直接映像になる作品ではないが、映像作品をつくる上で欠かせない作品をつくる学生を、可能な限りひとりでも多く巻き込んで画面内に登場させ、映像学部の底力を見せつけてやろう、そんに気持ちで仲間を増やしていきました。

本作品のために製作された「ゲーム」役の衣装(左)と、
造形作家 - 瓜生氏お気に入りの造形作品(右)
「制作に対する熱量をそのまま描き出した、『学生』の見える作品」
当時の私は、「その瞬間をそのまま切り取った表現がしたい」という思いから始めた音楽表現(*1) をひとしきり遊び終え、根性と時間だけをひとりで緻密に仕上げるアニメーション制作(*2) に少し疲れ、演出とチーム制作の面白さを知るきっかけとなった映画監督補佐(*3) を経て、「その瞬間を切り取り」「緻密な演出を施し」「チームでつくりあげていく」舞台芸術に対しての興味が芽生えておりました。(のちに、この映像作品がきっかけで実際に演劇舞台の演出にも関わらせていただきました(*4))
舞台芸術に興味が向いていたその頃、「カットを割りたくない」というわがままが芽生えてしまったことがきっかけとなり、「一発撮り」という撮影技法を選択しました。
完成した映像はバリバリに「編集」されておりますが、素材は1本の映像です。カットを割ってしまえば、そこに「修正できる可能性」が生まれてしまいます。この可能性が邪魔をして、「より良い画面を追求」したくなったり、見切れたスタッフが「撮影者のミス」と目立ってしまったり、何より「制作に対する熱量」というモノが、監督や、編集、2Dグラフィックスなどの目立つスタッフにばかり集中してしまいかねない。
もっと集中点をスタッフ全員に平等に分散して、スタッフのひとりがそこに居なくては完成しなかったと思えるくらいの綱渡りな映像作品にすることが、今回の私の挑戦でした。
主役はキャストの4人ではなく、4人を撮影するために働いたスタッフ全員です。
それが叶うことこそ、『学生』のみえる、卒業制作展にふさわしい告知映像になると信じて臨みました。
(「舞台みたいな映像が撮りたかっただけ」という下心はもちろん胸にしまって)
「作っていることそれ自体が楽しい、『初心をたどる』制作現場」
スタッフ全員が楽しいと思える作品へ、スタッフ全員がそれを目指せるような環境づくりを目指しました。
ここについて記述することが、今回【制作記録】をまとめようと思い立ってしまった大きな理由になります。次のページが本題だと言っても過言ではありません。

ページをわけて、
映像内に映る、数々の制作物についてまとめた
【制作記録】劇中作品について(立命館映像展CM)​​​​​​​
一発撮りを成功させるために画策した作戦についてまとめた
【制作記録】作戦について(立命館映像展CM)
2項目についてお話をさせていただきます。
誰かに言いたくて書いてしまった長く拙い文章です。
どうぞお付き合いくださいませ。

You may also like

Back to Top